百々果のお庭

「百々果様のことが大好きです…!」

…何とも過剰で素直な告白だ。


その日はお前と5回目のデートだった。

待ち合わせは、何時も15時。

たった100分間だけ…


そっと手を繋いだその頬は、火照っていた。

細路地を抜け、表に出た瞬間に振り払う様に手を離してしまうのか…

その純粋さが途轍もなく愛らしいよ。


あの瞬間だけは誰からどう見ても…

私たちは、恋人同士だったに違いない。


追伸


私の職業はSMの女王様じゃない。

職業は、花神 百々果。

私の足許では、よりエゴイスティックな、より本能に根差した欲望を爆発させろ。

私は何時だって優雅な心構えで軽やかに受け容れてやるさ…

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「貴方の今の言動は、think?それともfeel?」


think=考える、思考するに対し、

feel=感情、内面で感じる事。


もしかしたら、貴方は生きていく中でfeelを押し殺す様、幼い頃から抑圧を受けて来たのかもしれない…って想う。


「男の子なんだから、泣かないの」

「男がそんな情けない事言うなよ」

「気合いと根性で乗り切れ!」


…こんな具合に、ね。


男性が自身の弱いところやネガティブな側面を表現する事は歓迎されない場合が多い…feelを否定されて来たも同然よ。


でも、もう押し殺さなくていい…


「私は貴方の弱さを知りたいんだよ」


弱い部分を隠そうとするのはthinkの働き。


私の足許では、社会的立場と一緒にthinkを封印して、語っていい。

全てを曝け出していいんだよ…


…今からでも遅くなんてない。


feelを回復する愛の処方箋を貴方に…

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百々果様のお心…

…その赤い果実は、禁断の実。

今にも破裂しそうに膨らんで、

次第にその毒性は、増していってしまう…

貴女様の足許では、何時もそんな感覚を覚えてしまうのです。


主従を結んでもう直ぐ10年…

無口な貴方に唐突に投げ掛けられたその言葉に…私は正直、驚いてしまったよ。


ずっと、そんな想いを抱えながらも、

私と〝両想い〟でいてくれたんだね……


〝主従を結ぶ〟という事は、

〝両想い〟になるという事だ。


この狭い国の片隅には、

私に片想いしている人間もいるのだろうね。


然し、私は片想いなんて、

全く価値がないと思う。


だって、片想いって凄く楽だから…


君は私を観ているだけで、幸せなんだろう。

でも他の奴隷と私が遊んでいると嫉妬する。

私の知らないところで、勝手に愛おしくなって…切なくなって…哀しくなって…怒って……

そうかと思ったら喜んで……


君は何かやり遂げた気になっているのかもしれないが、本当は、何にもやってないよ。


そんな君と私の物語なんて、

全く語られる可き価値がない。



君はまだ、微熱だね…

その中途半端な心の体温を、

私の心を溶かすような…

燃えるような情熱に変えてみせろ。


それからもっと稚児しく考えたまえ…


私が君の在り来たりな物語を、

何処にも存在しない物語に変えてあげる。


君の話は、先ずそれからだね。


追伸


私と〝両想い〟の貴方は、


たとえそれが毒林檎だと分かっていたとしても、

躊躇なくその実を口にしてしまう……


愚かで、優しい…

そんな人、なんだよね。


私はそんな貴方だから、

好きになったんだ、と想う。


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