哲学者ベンス・ナナイ。

『美学入門』の著者でもある。

芸術を愛する貴方なら、彼の名前を聞いたことがあるんじゃない?


ナナイによると、芸術を見る時私たちは〝特別な注意〟が求められるという。

それは〝作品に集中しつつも、その中で視点を様々なところに分散させる〟ということ。


例えば、黒い背景に青いターバンを巻いた男がいるだけの絵を観たとしようか。

これは初期フランドル派の画家ヤン・ファン・エイクが描いた『青い帽子の男』という実際にある絵画。確かブルケンタール国立博物館…

この場合、普通に観ると青いターバンだけに目がいく。でもそれでは青という色を観ているだけであって、芸術作品そのものを観ているとはいえないよね?


芸術を観るという美的経験をするためには、視点を様々なところに分散させ、より多くの発見をしなければならない。


青いターバンそれ自体にも陰影があり、顔の色や背景とのコントラスト…

或いは男性の視線の向きとか、男の指で作られた形とか…

そんな感じで観てみると、この絵画の意味がもっと広がってくる。


つまり、そうやって対象に集中しつつ〝分散された注意〟を向けることで世界が別様に観えてくるということだよ。

当たり前だと思っているものに対して分散された注意を向けることで初めて、その当たり前のものは別の姿として立ち現れる。


追伸


大変失礼な話だけど…

以前の私は大抵の人間がする話に心底興味・関心がなかった。


けれども、今は芸術として捉え直している。


どんな雑談であっても、たとえその中心になっている話題に興味がなくても、どこかに自分が面白いと想えることや、参考になる話がある。


そこにいかに注意を向けるかで、

傾聴の仕方が変化してきたと想う。


どんな物事にも、複数の要素が含まれているのだから、何か意義を見出すことは可能なはずだ。


最近は、退屈していないよ…ナナイ。

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