学部生時代に興味本位でとった文学論の教授は、授業そっちのけで今後の人生に役に立ちそうで立たないような教訓を1時間半だらだらと語り続ける人だった。
私は毎週木曜日1限目、淹れたてのコーヒーをタンブラーに入れて持っていき、その教授の話をまるでラジオのようにのんびりと聴くことを密かな愉しみとしていた。
話の内容その殆どは、やはり何の役にも立たず糧にもならなそうな…寧ろ自慢話ばかりだったので、忘れてしまった。
ただ、一つ印象に残っている言葉があった。
「この中に僕のことを寡黙な人間と思っている者はいるかな?
……
…そうだよね。
僕は、饒舌な人間だ。
僕のような饒舌な人間は、一言足りないくらいで丁度いいんだよ。
でも、奥手な人間は、一言余計なくらいで丁度いいものだ。
だから、奥手な人間の足りない一言を饒舌な人間が補ってあげるとバランスがよい。」
追伸
「僕が妻のような美しい女性と結婚できたのは、奥手な彼女の足りない一言を補えるからだ」
結局、自慢話なのね。