ロマであることは、
〝何者にもならない〟ことだ。
現代のフランスを代表する哲学者、ミシェル・オンフレがその著書『コスモス』の中で※ロマの価値観について述べていた。
※ ロマ民族は、インド北部に起源を持つ少数民族で、10世紀頃からヨーロッパを中心に世界中に拡散して生活している。
彼らにとって仕事とは、自己達成のためではなく、生きるための手段だとオンフレは語っています。
ロマは金銭も、それを所有することも、名誉も権力も好んでいない。
何かを所有することは、反対にそれらに拘束されることを意味する。
彼らは、人やものに一切拘束されないことを尊ぶ自由な民族なんだ。
彼らにとって、ものを通じて繋がりができることはあり得ない話なんだよね。
存在していれば、それでよい。
何も所有する必要はないと考えるから。
彼らの住居であるトレーラーハウスには、「存在する」すなわち生きていくために必要なものだけが揃っている。
ロマが亡くなると、ひと昔前までは、馬車ごと私物を燃やしてしまっていたらしい。
持ち物全てを焼却するということが、ロマの民族のものに対する執着のなさを物語っている。
私は、彼らほど手放すことはうまくない。
…いや、できるはずもない。
しかし、これだけは強い共感を覚えた。
「全て焼却する。
愛しい者を失ったときは、
何ひとつその者に代わるものはないから。」

