時計の針は、0時を指してる…


貴方の事を、憶い出してた。


あぁ…なんて美しいんだろうか。


それは儚く繊細で、綺麗に透き通っている…

私の足許で言葉を尽くす貴方の瞳を観ているだけで、眩暈を起こす程に興奮してる……


その心、欲しい。

私だけのモノにしてしまいたい…


庭園で貴方みたいな花を見つけると、

そっと摘んで城に連れ込んでしまう悪い癖があった。


そういえば、よく叱られていたな…

幼い私にお前はこう言って聴かせていた。


愛しているのなら、

自由に咲かせてやらねばなりません。


変わらず傍で咲き続けるのなら、

百々果様のお花です。


消えて無くなってしまったのなら、

初めから百々果様のお花ではなかったのです。


「厭だ…消えちゃうなんて絶対に厭だ……」


…お前が悪いんだ。

私にそんな風に教えたからだよ。


それから私はどうしても欲しい花は、

寝室のクローゼットの奥に隠しておく事にしたんだ。


…此処に貴方の心を重い鎖で繋いでおく。

そうすれば、離れられない。


私だけの花…

私だけが愛でる事を許された花… 


想いの儘に綴っていると、

抑えられない醜い独占欲が丸見えで…

恥ずかしいよ。


不意に視線を時計に戻す。

…時刻は0時。

止まって、待っていてくれたんだね……


長針と短針…私と貴方が…

唯一、重なり合っていられる時間。



追伸


時計の針が進んだ瞬間に、

貴方は日常に帰っていってしまう…


でも、不意に…

私の名を呼んでくれるね……


「お顔を見に伺いました」

「少しお話しましょうか」

「寂しがられている様でしたので…」

「急に逢いたくなって、来ちゃいました」

「百々果様に虐めて欲しくて…我慢出来なくて…」


その全てが、嬉しい。


ありがとう…